李承信の詩で書くカルチャーエッセイ 第2期 トランプ大統領就任を迎え 長く暮らしたアメリカの大統領選選挙は韓国の大統領選挙ほどに私をときめかせます。 特定の党を支持していたわけではありませんが、今考えてみると太平洋を越えて夢にまでみたわが祖国に有利な人を好んでいたようです。
幼かったせいもあるでしょうが、ケネディやオバマのように特別な演説で大衆の心を鷲づかみにしたり、その人ならではの特別なスタイルに魅了され好きになりもしました。
7年前、道徳的にいろいろと問題の多かったトランプが当選すると、世界が驚き、私も驚きました。
ちょうどその時、韓国はセウォル号事件などで朴槿惠大統領が弾劾され、群衆がろうそくデモに押しかけ、早期選挙を望んでいたときであり、大統領は拘置所で、李在鎔などの大企業のオーナーたちは特別検察で身動きもできないときでした。 最後の瞬間に何人かの使節団に加わることができ、トランプ1期の就任式に参加しましたが、私だけでなく皆がアメリカは不思議な国だ、こんなにも問題だらけの人物を選ぶなんて、と考えていました。
ところが、その人物が4年後に再びアメリカ大統領として登場しました。 世論調査の結果を裏切って勝利したことも驚きですが、既存の犯罪にもかかわらず何ヶ月か前とは異なりトランプを見る世界の目と印象はかなり変わった感じがします。 トランプの言葉のように、「以前はケンカしようととびかかってくる人が多かったが、今はお互いに友になろうと思う」です。 トランプのStrongな姿勢でそうするなら、戦争を解決できはしないかと思ってしまいます。
尹大統領にトランプから先に電話がきて、造船業などを頼むと伝えてきたといいますが、造船、原子力発電などの経済や防衛はもちろん、話し合うべきことは山積みなのに、突然の政治的混乱により世界唯一の小さな分断国家は、どのチャンネルを使って韓米同盟と韓米日の協力を強化しようというのでしょう。世界が争って就任前にトランプに会おうと必死になっている中、徒にゴールデンタイムは流れ去ろうとしており、歯がゆいばかりです。
ここに2017年のトランプ就任式の様子を再録します。
韓国も一日も早く安定を取り戻し、世界の一員として寄与できることを願います。 2024 年 12月 23日 李承信 TV 放送人 詩人 作家
2017 1 22
李承信の詩で書くカルチャーエッセイ 希望の紐を握り締め ついにトランプ大統領がアメリカの大統領になりました。トランプ時代がついにその幕を開けたのです。
就任式に招待され、20余年間をそこで暮らしたワシントンに向かいました。 韓国のろうそくデモと同じ時期に、選挙結果に落胆してアメリカの諸都市でデモが起き、カナダに移民するという列ができ、‘He is not my President’と叫びながらアメリカが二つに裂かれています。
アメリカの開放性と民主性、そしていざというときには大きな葛藤を抱えながらも互いに連合して抱擁し合える、その偉大な精神を信じる私は、一抹の希望を抱いて祈るような思いで、ワシントンにいたころテレビでだけ見ていたアメリカ大統領就任式にやってきました。
韓国の野党が THAAD 問題で中国を訪問したことに反感を抱いたトランプが、韓国は就任式に招請さえしなかったと噂されましたが、韓国の状況はよその国の大統領就任式に出かけられるような状況ではありませんでした。国のリーダーや政府の状況はもちろん、安保に劣らず重要な経済問題のため当然飛んでくるべき大企業の総帥たちも、特別検察のため身動きもできないのですから。
この急を要する時期に、常日頃国と国との葛藤には、感動のない首脳会談よりも民間次元の交流の方が遥かに重要であると考える私は、何人かの同行者とともにトランプの長いサインが書かれた招請状をもって就任式が開かれる1月20日、Capitol Hill の国会議事堂に行きます。
小雨が降りましたが気温は12度と暖かく、昨夜の祝賀舞踏会では大騒ぎだった市内は落ち着いて静かでした。現場はオバマ大統領のときの何分の一しか集まらなかったといい、反トランプデモ隊が警察と対峙していました。
トランプはホワイトハウスのすぐ前の迎賓館 The Blair House に滞在し、そのすぐ横の St. John's Church で礼拝をし、ホワイトハウスでオバマとお茶をし(トランプが朝10時にホットチョコを飲んだというのも特異です)、就任式会場に到着しました。
カーター、クリントン、ブッシュ、オバマの4人の元大統領が座り、トランプとペンス副大統領が入場します。就任式はトランプの母が1955年の日曜学校卒業のときに息子にプレゼントした聖書と、リンカーン大統領が書いた聖書の二冊を重ねた上に手をのせての宣誓と祈祷、そして就任の辞と続きます。
オバマの就任の辞やその他数多くの名スピーチと比べてではなく、トランプ大統領の 16分間の演説は、もう一度一つになろうという Unityもなく、人類の未来に向かってのビジョンと哲学もなく、この日のために日本でのスピーチの約束も取消し、ソウルから15時間も飛行機に乗ってきた私はちょっと失望させられました。‘われ等の仕事場と夢、富wealthと国境を元通りにする。America First アメリカ優先’と宣布し、この日は世界が未だ見たこともない歴史をなす最初の日になるだろうと大言壮語しました。
大統領選挙のときは、まずは当選するために誇張もしポピュリズムを見せることもあります。しかし、少なくとも私が知るアメリカは、全世界が見つめている就任式で傷つき、引き裂かれた人々をみな抱き寄せる偉大な包容力を見せました。だからこそ癒され再び立ち上がる力を得て、感動の坩堝となって世界を引き寄せたのです。
しかし、この就任の辞は彼を支持する人々のためだけの演説であり、キャンペーン演説と変るところがありません。いえ、さらに強硬なものでした。殺戮、荒廃として閉鎖された工場、落伍した教育、犯罪、銃器、麻薬等の暗く否定的な語彙を使い、政治経験が全くないと評される彼は、全ての政治家たちを十把一からげにどなりつけました。Empty talk ばかりだという非難には、感動の演説で有名なオバマを指さすかのようでした。実際にホテルに帰ってからテレビ画面でみたオバマと元大統領たちの顔はゆがみ、侮辱された表情がありありとしていました。
強硬な演説で初日からオバマケアー廃止と不法移民者追放、TPP脱退等を行いました。メキシコや日本、ヨーロッパ等もさぞや驚愕しているでしょうが、世界唯一の分断された小さな国で、強大国に囲まれ輸出で食いつなぐ私たちは一体どうすべきかと本当に心配です。
The strongest and the wealthiest on the Earth。このような発想と創意、さまざまな面で先を行く国、全世界の人々が仰ぎ見る国が突然自分さよければいいと民族主義に回帰したのは、決してアメリカにとってよいことではないと思われます。わたしの第二の故郷である愛するアメリカが、それによるしっぺ返しを食わされることになりはしないかと深く憂います。
私の青春と思い出があり、よい環境と古い友人たちのいるワシントンであるにもかかわらず、新しい大統領の怒号と姿勢を見て心がむやみに落ち込みましたが、なんとか立ち直ろうと思います。そして‘希望の紐’を握り締めてみます。
思えば第45代アメリカ大統領、副大統領の就任式は一つの美しい礼拝でした。1時間2分の式で宣誓と就任の辞をのぞく残りの時間を占めたのは六人の祈祷でした。‘雨が降っていますが、聖書では雨は祝福の慈雨といいます。ソロモンに与えた知恵をこの大統領にもお与えください’とビリー・グラハム牧師の息子であるグラハムJr.牧師が祈りました。
トランプは就任式の朝、オバマとホワイトハウスの最後のお茶をする直前、向いにある教会で祈祷し、母にもらった神の言葉に右手をのせ(私の母は右手のことを正しい手といいます[韓国語で右手と正しい手の発音が同じことから])世界万邦に向けて宣誓し、White House での最初の夜にリンカーン大統領のベッドで寝、起きるや否や祈祷し、就任式の翌日最初の行事としてワシントンの National Cathedral で礼拝をささげました。自ら就任の辞で何よりも神の助けが必要だと言い、大統領になった一日目と二日目に最初にしたことは何かという記者の質問に、‘祈祷’だと語りました。
超のつく大金持ちになるため数多くの体験を経てきたはずであり、当然‘人が心に計画を立てても、それを導くのは神である’ということを悟っているでしょう。 狭くなった世界の人類のために、私の祖国とアメリカのために、結局は正しい道に導かれるはずだという希望の紐を、世界超大国の首都ワシントンの真ん中で、しっかりと握り締めていようと思います。
대통령의 선서 후 - 워싱톤 국회의사당 앞 2017 1 20
車から降りメラニア夫人、息子と行進するトランプ大統領 - 2017 1 20
連邦防衛軍の行進
45代アメリカ大統領就任式直後 – ワシントン 2017 1 20
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